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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)829号 判決 1979年3月27日

控訴人 大田機械製造株式会社

右代表者代表取締役 折原義人

右訴訟代理人弁護士 桜井英司

被控訴人 岸一雄

<ほか二名>

右三名訴訟代理人弁護士 菅沼漠

同 鈴木醇一

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人代理人は、「原判決を取消す。被控訴人らは、各自、控訴人に対し、金三一四万四七一〇円及びこれに対する昭和五二年一月二三日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は、「本件控訴を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、当審において、控訴人代理人が甲第一二号証の一ないし五、第一三号証の一ないし五、第一四ないし第二〇号証を提出し、被控訴人ら代理人が右甲号各証の原本の存在及び成立を認めたほか、原判決事実摘示のとおりであるから、それをここに引用する。ただし、原判決四枚目表二行目に「一億八、五〇〇万円」とあるのを「一億八〇〇〇万円」と、同裏三行目に「梶山和彦」とあるのを「梶山和秀」とそれぞれ訂正する。

理由

一  請求の原因1、2項の事実並びに同3項のうち破産申立の理由及び破産宣告の日を除く事実は当事者間に争いがなく、《証拠省略》によれば、右破産申立は支払不能を理由とするものであり、破産宣告の日は昭和五一年一一月一一日であることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

二  《証拠省略》を総合すれば、次の事実を認めることができる。

1  訴外会社は、昭和三〇年六月二九日被控訴人ら三名が中心となって設立した株式会社であるが、日本経済の高度成長の波に乗って、同四八年度には二一億円の売上高を計上するに至った。

2  しかし、同四八年秋のいわゆる石油ショック以後の総需要抑制にともなう全般的不況下において、受註は急激な落込みをみせる一方、人件費その他の経費は高騰し、同四九年度の売上高は一五億五〇〇〇万円に、同五〇年度のそれは一三億円に激減し、同年度の決算においては一億八〇〇〇万円余の欠損を出し(同年度に右欠損が出たことは、当事者間に争いがない。)、次いで同五一年四月から同年九月までの半年間の欠損は一億二八〇〇万円(累計欠損三億〇八〇〇万円)に達した。

3  被控訴人ら訴外会社経営者は、右のような経済界の情況に応じて、それなりの経営努力をしたが、それにもかかわらず、同五一年一一月に入り運転資金が枯渇し、同月一〇日満期の手形決済が不能となったため、同月八日前記のとおり自己破産の申立をするに至った。

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。そして、訴外会社が控訴人との間で控訴人主張の荷役機械の取引を開始した当時、訴外会社に右機械の代金を支払う見込が全くなかったこと及び被控訴人らがそのことを知っていたことを認めるに足りる証拠はない。

三  前記認定の事実によれば、訴外会社の取締役である被控訴人らには、訴外会社の破産という結果の発生について、悪意又は重大な過失に基づく任務懈怠があったとはいえない。その他控訴人主張の損害と相当因果関係にある被控訴人らの任務懈怠行為を認めるに足りる証拠はない。したがって、右任務懈怠行為の存在を前提とする本訴請求は、その他の点について判断するまでもなく、失当であるといわざるをえない。

四  よって、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 枡田文郎 裁判官 山田忠治 佐藤栄一)

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